秋晴れの一日


〜 30000hits記念 〜




う〜〜…… さっむ〜……



秋晴れの今日、アパートを一歩出たあたしは、

あまりにも空が青く澄んでいるのを見て曇っていた心が少しだけ軽くなった。

怠け者の同居人を怒鳴り散らす毎日。

昨夜もそうだった。そして今朝も……。



あ〜あ、イヤになっちゃう……



伝言板を見に行くのが日課だけど、駅までの決まりきったコースを

今朝は少しだけ外れてみることにした。

ちょっと寒いけれど、素直にアパートに帰るのは何だか悔しくて、

両手をジャンパーのポケットに突っ込みながら遠回りした。

ぐるりと公園を一周してから、錆びたベンチに腰掛ける。

背を凭れかけて天を仰ぐと、見事な紅葉が快晴の青空に映えていた。

葉の隙間から差し込む陽の光が、ベンチに座るあたしに柔らかく降り注ぐ。



うわ〜っ… きっれ〜い……





紅葉






吐く息がいつの間にか白くなっていた。

そんな季節の変化にすら気が付かなかったな。

依頼が取れないことにイライラして

撩が夜遊びすることにイライラして

家計が火の車だということにイライラして……。

あ〜あ、情けない。

生活に余裕がないどころか、心にも余裕がなくなっているじゃない。



どのくらいそうしていただろう。

ドカッと音がしてベンチが揺れた。



りょ、撩?!



長い足を伸ばして隣に腰掛けたのは、見慣れた同居人。

何も言わずに頭の後ろで腕を組んだまま、同じように空を見上げている。

今朝の口喧嘩を思い出して、あたしは何を言ったら良いのか判らなかった。

口を開くとまた憎まれ口をききそうで、そのまま空を見つづけた。



「きれいだな」



長く続いた沈黙を破った言葉は、心に染みた。

同じ景色を見て、同じ気持ちになれる人が傍にいるということが

どんなに幸せなことなのか、忘れていた。

両親がいなくても幸せだと思っていたのは、

いつも一緒に歩いてくれる人がいたからなのに……。



アニキ……



心で呟いたのが聞こえたのかもしれない。

肩に手を置かれて、あたしは自然に撩に寄りかかった。

触れ合う部分から温かさが伝わってきて、

冷たい体を、心をゆっくりと溶かしていった。

そのまま空を見つづけるあたし達に、ひらりと紅葉が舞い降りた。






<End>







<管理人のあとがき>

みなさまのおかげで当サイトも 30000Hits を迎えることができました。

本当にありがとうございます。これからも がんばります!!




◇◆◇◆◇◆◇




      ムツ 「なんかさぁ、ホロッとしちゃったよ。あんたっていい奴だったんだね。」

      撩  「・・・・お前、今ごろ気が付いたのか?」

      ムツ 「うん。悪かったよ。スケベで女ったらしで我侭な奴だと思ってた。」

      撩  「おい!主役にむかってそれはないだろう、それは!」

      ムツ 「あ〜ら?ごめんなさいねえ。このところ脇役多くなっているからさ、

          主役が誰か忘れてたわ。おほほのほ。」

      撩  「くそっ! グレてやる。香を連れてこんなところから逃げてやる!」

      ムツ 「ああっ! そ、それだけは・・・あんた達がいないとあたしは・・・」

      撩  にやり(弱みを握ったぜ) 「じゃあ、大事にしろよ。オレ達を」

      ムツ 「ふ・・・不覚・・・」 ガクッ