Apple Pie




美樹さんからたくさん貰ったから……

置いておくと腐っちゃうから……

せっかくオーブンがあるのだから……

買うよりも安いから……

誰かさんのせいで依頼がないから暇だし……





そんな言い訳をいくつも考えながらりんごを砂糖とレモン汁で煮詰める。



だってさ……

悔しいじゃない。

いっつも手間かけてご飯つくっても、かきこむだけで

『美味しかった』の一言もないし……

『腹に入れば味なんか関係ない』 なんてセリフ聞き飽きたわ。

こんなものも作れるのよ、って言いたいじゃない?





ラム酒とシナモンを振りかけて生地で包み込む。



あとは、ほら……

文明の利器が仕上げてくださるのを40分待つだけ。

簡単じゃない。





キッチンテーブルに頬杖ついて考えてみる。



どうしてアイツは『うまい』と言わないのかしら……

恥かしいの?

照れてるの?

どっちかな?

……もしかしたら……

本当に不味かったりして……

そんなばかな……はは…は……







ピピピピ……





あ、焼けた焼けた。

い〜匂い!!

上出来上出来。

久しぶりにしては、よく出来た方だと思うわ。

甘味を抑えたから、これならアイツも……





「お、アップルパイか?珍しい。 槍でも降るんじゃねぇのか?」





ええ?!

もう帰ってきちゃったの?

こ、心の準備がっ……





「あ、その……えっと……」





用意したはずの言葉がすんなり出てこない。

金魚のように口だけパクパクしている自分が情けない……





「どれ、味見させろ」



あ!ちょっと手、洗ってないでしょ!

なんて抗議も聞き入れてくれない。

さっと口に放り込み、飲み下されるのをじっと待つ。





「……どお?」




「……まあまあだな」





もう!

どうしてアンタは……!!





鼻歌まじりで指を舐めながらニヤニヤ笑うアイツ。

くやし〜〜〜!

今までの苦労は何だったの??

今度こそ、今度こそ

絶対に『うまい!』って言わせてやるんだから!!





<End>



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




<あとがき>

今日は私、お題の通りにアップルパイを作ってみました。意外と簡単で驚きです。
ええ、もちろん冷凍パイシートを使用。(笑)



ムツ 「あんたっって、確信犯だよね」

撩  「おっしゃる意味がわかりませんが……何のことだかさっぱり……」

ムツ 「ええい!シラばっくれないで白状しろ!」(ザ・首締めの術)

撩  「ぐっ!! く、苦し〜〜… わかった、言うから離せよ!」

ムツ 「カオリンの性格知っててこういうことやるんでしょ」

撩  「くそっ!バレたか……」

ムツ 「あたしゃ、何でもお見通しだよ。ああ言えばカオリンが怒って何度でも作るからねえ」

撩  「……あいつは単純だからな」

ムツ 「『あ〜おいしかった。また作ってくれよ。チュッ』 とかやればいいじゃないの。

    ほんと、素直じゃないねえ。やれやれ……」

撩  「ほ……ほっとけっ」