close to you







あなたのそばにいたいの…

ただ、あなたのそばにいること

それが私の願い―――






∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞









その日最後のニュースが流れるリビング。

ボーッとしてテレビに見入る香に撩は声をかけた。




「お前、何 やってんの?」


「あ、撩…」




顔を上げた香は、撩を見るとクスクスと笑い始めた。




「なんだよ」


「いや…ちょっと、思い出し笑い…ごめん」


「気持ち悪いなぁ、なんだよ」


「いや…あのね。さっきのニュースで、獅子座の流星群が見えるって言ってたの。

それで、高校生の時に、アニキの車で山の中まで見に行ったことを思い出して…」


「ふぅん。で、何がそんなに可笑しいんだ?」


「あたしね、流れ星っていうものに願い事をしてみたかったのよ。

で、行く途中で、何をお願いしようかず〜っと考えてたのよ。それも真剣に…。

なのに、着いてみたら、それこそ次から次へと星が流れるのよ。アニキったら、

『お前の願いは一生分叶いそうだな』 ってぼやいたのよね。

あたし、それ聞いたら可笑しくって…。

あんなに流れ星が見えるなんて、有難味がなくなっちゃったわ」


「それもそうだな」


「その時のあたしは、何をお願いしようとしてたのかを思い出してたの」


「何だった?」


「たしか、試験のヤマが当たりますように、だったかな…」


「何だ、そんなことか」


「それがその時のあたしにとっては一大事だったのよっ」




そんな言葉に、はははっと撩が笑う。




「流星群って本当に綺麗なのよ。今回も見てみたいけど…。この街じゃ無理よね」


「そうだな…」




撩はバーボンの入ったグラスを傾けた。

氷がカランと音を立てる。




「もし…見られたら…」


「え?」


「もし、今、流れ星が見られたら…お前は何を願うんだ?」




そう呟いて、撩は優しく香を見つめた。

二人の間を柔らかな空気が流れる。





あたしの願いは―――。





「…そうね…」




香は顔を赤らめてしばらく黙って考えていたが


「今の願い事は…依頼が山ほど来ますように、かな?」


と、クスリと笑って答えた。




「何だ、色気ねぇ奴」


「そういう撩は何なのよ」


「オレか?決まってるだろ?世界中のモッコリちゃんと…イデ!!」




肘鉄を思いっきり食らってうずくまる。




「ばっかじゃないの?」


「うるせー! この暴力女!」


「何だって〜?!」




ハンマーを振り上げた香に恐れを成して、撩はリビングを飛び出していった。




「あきれた奴…」




一人呟いて、カラカラとベランダの戸を開く。

新宿のネオンが眩しい夜空には、流れ星どころか星すら見えない。

ふ〜っと、大きなため息を漏らす。




「…冗談よ…バカ…」







あたしの願いはただひとつ…







I wanna be close to you

Just to be close to you

Is my desire…




<End>



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    <あとがき>

    ええっと・・・この作品は他サイトさまに掲載していただいていたものですが、

    残念ながら閉鎖されてしまい、こちらでアップすることになりました。

    ついでに今更ですが、若干手直しもしたりしてます(汗)。三人称って難しい・・・

    この作品を生み出す元となった曲は debelah morgan の『Close To You』 という曲でした。

    彼女の唄は、歌唱力抜群でとってもお勧めです。




    ムツ 「あ〜、カオリンったら可愛いわv」

    撩  「・・・そうか?」 (ムッ)

    ムツ 「そうそう、こんなアホの相手なんか勿体無いわぁ。あたしの傍に置いて

        独り占めした〜い! そして毎日食事作って欲しいなあ。(うっとりと夢想中)」

    撩  「却下!」

    ムツ 「なんでよ〜〜。あんたばっかりズルイじゃん!」

    撩  「あいつの料理は、他の奴は食えねえんだよ」

    ムツ 「は? なんで?」

    撩  「・・・・・やばいクスリが入ってんだ」(衝撃の新事実!)

    ムツ 「ひえ〜〜!知らなかった。何のクスリだっていうのよ」

    撩  「・・・惚れ薬」

    ムツ 「・・・・・・」(アホらしくて何も言えない)

    撩  「っていうことで、次回はオレがどうやってこのクスリを入れさせているかっていう話だ。

        楽しみにしててくれ。じゃ〜な。」

    ムツ 「こらあ!ちょっと待て〜〜!」