ホトトギス






なによ、これ。どうしたの?




  「角のおばちゃんに貰った。お前にって」




へえ。珍しいわね。あのおばさん、ケチで有名じゃない




  「余りもんなんだと」




ふ〜ん……きれいね




  「そ…っか? よくわからんな」




今度会ったらお礼言っておかなきゃ




  「んな必要ないって」




どうして?




  「ちゃんとオレが言っておいたから」




でも、だって……悪いじゃない




  「いいから。黙って貰っておけって」




??  へんな撩。何赤くなってんのよ




  「うっせえな。オレ、ちょっと出かけるからな」




出かけるって……これから晩ごはんなのに?




  「大切な友情とやらを深めてくるんだよ。お前は先に寝てろ」




んもうっ  またミックと遊びに行くのね。

ようやく依頼が片付いたと思ったら早速夜遊びってやつ?

オトコってほんと、しょーもない生き物だわ。





慌しく階段を駆け降りる足音を聞きながら溜息なんぞついてしまったけれど、

水を用意していたら、それは自然と笑みに代わってしまった。



まあ、今回は許してあげようかな。

あいつ、あたしが気付かないとでも思ったのかしら。

艶やかなガーベラの花束の影に隠れるように、小さな紫色のホトトギスが一輪。

どう見たって不自然じゃない。

バカよね。



花瓶をサイドボードの上に飾り、ジャケットを羽織った。





さてと。照れ屋のあいつを迎えに行くとしますか―――



<End>









  <あとがき>

   ホトトギスの花言葉は皆様ご存知と思いますが(アレですよ、アレ)、いつの誕生花だかご存知ですか?

   様々な文献に、9月12日説、9月14日説、そして10月9日説が載っています。

   まあ、どれでもいいんですけど、その日に生まれた方はとっても幸せになれそうですよね。

   カレンダーを見ながら思いついたショートショートでした。




    ムツ 「バレバレやんけ」

    撩  「うるせえ」

    ムツ 「どうして素直に渡せないかねぇ」

    撩  「いいだろ、ほっとけ」

    ムツ 「はぁ〜…世話のやけるやっちゃね」

    撩  「オレはお前の世話になった覚えはない!これからもなるつもりはない!じゃあな!」

    ムツ 「あ〜あ、行っちゃったよ。ここまで照れを引っ張ることなかろうに。まだまだ若いね。ふっ」