Hot×Hot
え?! 今何時?
誰かが廊下を歩く音で目が覚めた香は、身体にかけていたタオルケットを
跳ね除けて起き上がった。
壁にかけてある時計を見上げると、時刻は11:45をさしていた。
何度見ても見間違いが無い。しかも、夜中の11:45なのだ。
し、しまった〜〜〜っ!!
あ〜〜 やっちゃった・・・
香は大きく溜息をついた。
昨日までは確実に覚えていたのに。
どうせ暇なんだから、今日準備しようと呑気に構えていたのよ。
なのに、こういう時に限って急遽依頼が入っちゃうんだから不思議なものよね。
でも、まともな依頼はホント一月ぶり。
これでツケが払える、と有頂天になってそのまま徹夜で仕事をこなして、
終ったのが・・・・・・確かお昼過ぎ。
・・・で、そのまま泥のように寝てしまった、のよね。
う〜〜〜〜・・・どうしよう。
あいつのことだから、忘れていた、なんて言ったら絶対に・・・
そう! 絶対に機嫌悪くなる。それどころか、怒り爆発、よね。
いっそのこと、明日あげようかな。
いや、それはダメよ。
確か翌日にあげるのは『あんたなんか嫌い』の意味だってTVか何かで言ってたわ。
さすがにそれだけはしたくないし・・・・・・
あーもう! こうして考えている間に、もう10分しか残っていないじゃないの。
風呂場から水音に混じって鼻歌が聞こえてきた。
どうやら撩も寝ていたらしく、眠気覚ましのシャワーを浴びているのだろう。
香はこれからの展開を考えただけで頭が痛くなった。
う〜ん・・・・・・
一番近いコンビニまで走って行っても戻ってくるまでに12時を過ぎちゃう。
どうすれば・・・
あっ!
確かまだ一箱あったはずよ!
そうよ、あれで誤魔化せば・・・・・・
先週パチンコの景品でゲットしたのがまだ残っていたはずだと思い出し、
大急ぎでキッチンへ走った。
あったあった!!
あ・・れ?・・・・・・ちょっと! これ口が開いているじゃないっ!
ガーーン・・・
これじゃぁ残り物だっていうのがバレバレよ。
あ〜ん、どうしよう・・・・・・
・・・・・・そうだ! いいこと考えた!
カラスの行水よろしくあっという間にシャワーを終えた撩が、キッチンへ入ってきた。
目の前にコトリ、と湯気のたったカップを置く。
「何だ、これ」
「いいから、飲んでみてよ」
「毒でも入っているんじゃねぇだろうな」
「バカ言わないでよ」
ちょっと不審気に、でも、アチッ、とか言いながら口をつけた。
喉がグビリと上下に動くのを見つめる。
「珍しいな。ホットチョコか」
「うん。たまにはいいでしょ?」
「たまには、ね・・・」
何だか見透かされたようで思わず逸らした視線の先では、時計が丁度12時を
さしていた。
気付かれないように、ホッと胸を撫で下ろす。
「ふん。間に合ったみたいだな」
!!
全部お見通し、ってワケね。
あたしの視線の先を捉えて、しかも全部判ったような顔をして・・・
く、く・や・し・い〜〜〜っ
「ちょっと甘すぎだな」
「え? 結構砂糖は控えめにしたんだけど」
「味見してみろよ」
ん・・んんっ?!
「な?」
な、何が 「な?」 よ!
もうっ!! 何すんのよっ!
盛大に真っ赤になったであろうあたしの顔を満足そうに見て、撩はニヤリ、と笑った。
「残りもんのチョコじゃ、あんまりだろ? だからさ」
「何よ」
「おまけを貰った」
「・・・・・・」
ごちそうさん、とか言いながらさっさと部屋へ戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら、あたしは心の中で叫んだ。
ホワイトデーは3倍返しよ。いいわね!
<End>
<あとがき>
バレンタインネタでした。え?物足りん? まあ、あいつらはいつもアツアツだからいいや。
ホットチョコは超簡単につくれますよ。ココアみたいな味なんだけどね。
板チョコ刻んで、牛乳と砂糖をぶち込んで温めて溶かす。以上(笑)
ムツ 「おいおい、おまけがめちゃくちゃ高価な気がするぞ」
撩 「ん? そうか? 気のせいだろ」
ムツ 「気のせいじゃない〜〜〜っ だって欲しくても買えないじゃん」
撩 「ふふん。オレだけが手に入れる方法を知っていればいいのだ。はっはっはっ」
ムツ 「あんた、その言い方ってスケベ親父みたいだね。歳誤魔化してるんじゃない?ひひ」
撩 「バカ言うな! オレは万年ハタチだっつうの!!」
ムツ 「まだそんなこと言ってんの? それじゃあ、カオリンだけ歳とっていくんだね」
撩 (はっ) ←どうやら気付いていなかったらしい。アホな奴。
ムツ 「オトナのカオリンがハタチのガキなんか相手にするわけないよねぇ」(ニヤリ)
撩 「・・・・・・」 ←言い返せないようだ。
ムツ 「そうかぁ!精神年齢はハタチだけど、肉体年齢は40とか?(高笑)それならわかるよ」
撩 (ぎりっぎりっ) ←頬の肉を噛んでいる音。 そして無言で立ち去る。
ムツ 「初めて言い負かした気がする・・・(感・涙)」
|