男の勲章





「ハ―イ、リョウ。……、ってその顔どうした?!」

「……別に」

「別にってことはないだろ?カオリとケンカでもしたのか」




あ〜あ…。どうして、来る奴来る奴同じことばっか聞くんだ?

他に話題はねえのかよ。




「どうして話がそっちにいくんだよ」

「それじゃぁ、階段から落ちたのか?それとも組長のオンナに手を出したか?」

「……あのなあっ」

「ねえ、ミック。何かあったと思うわよね」




美樹ちゃんもおかしそうに目を細めた。

ふん。

オレだってなぁ、こんなところで話題を振り撒いたりなんかしたくねえんだよ。

誰にも会わないうちに、さっさとどっかにしけこみたかったんだ。

なのに、タコ坊主につかまってこのざまだ。

いい晒しモノじゃねえかっ!




「なあ、リョウ。マジで大丈夫か?」

「たいしたことねえ」

「カオリ、は…?」




チラと見遣ると、奴もふざけてんじゃないってことがわかって、オレは白状した。




「……無事だ」




それだけで通じたミックは大きな溜息をついた。




「ったく…、あせらすなよ、リョウ」

「ちょっとドジっただけだ」

「ほほお? 天下のシティーハンター様でもそんなドジ踏むんだねえ」




このやろう……人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって。




「悪かったなっ」

「あんまり無理するなよ。
…もう歳なんだから

「なにい?!」




オレが勢いよく席から立ち上がると、ミックは跳ねるように後ずさった。




「やるか?!」

「おおっ 勝負だ!」




って言っても、とっくの昔に現役を退いたミックとじゃ、

体力勝負はフェアじゃないし……




「よし、一時間で何人のオンナをナンパできるか、勝負だ」

「はあ?………リョウ、何考えてんだよ」

「逃げるのか? 負けるのが悔しいんだろ」

「ふざけんな! よし! その勝負やったろうじゃないか」

「まあ、オレ様の勝ちはわかりきっているがな」

「なにいっ!!」

「なんなら、量より質で勝負してみるか?」

「バカめ!日本のオンナはアメリカ人に弱いのさ。俺の勝ちだ」

「ふん。オレのモッコリパワーでどんな美女でも落としてやる」

「やるか?」

「お前こそ!」






「その勝負、ミックの勝ちね」






視線で人が殺せるのなら、オレはとっくに死んでいる。




「か…香………」

「そんな顔で引っかかる女がいるとでも思っているのなら、大間違いよ」

「いや、これは……その……ちゃんとしたわけが……」

「う・る・さ〜〜〜〜いっ!」




ドッゴーン……―――






そのままズルズルと引き摺られていくオレを、気の毒そうに見送ってくれた奴ら。

ちくしょう……憶えてろよ、ミック。




それにしても、香。

恩を仇で返すっていうのはこのことだぞ。

おい、聞こえてるのか?

返事しろよ、おい……






<End>


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





   <あとがき>

    時間が経つのは早いもので、あっという間ですね。

    でもここの二人は、相変わらず時間が止まったまま。だと思いたい。

    歳とった撩ちゃんなんて、いやだ! と声を大にして叫びた〜い。






    ムツ 「アホだね、こいつは」

    撩  「ふん」

    ムツ 「自分で傷増やしてどうする」

    撩  「いいだろ。どっちも男の勲章だ」

    ムツ 「カオリンにやられるのも勲章っていうのかい?」

    撩  「そう。世界でオレしかもらえない勲章」(威張りっ)

    ムツ 「おい・・・・・・言ってて虚しくないか?」