そして鐘の音が…





長かった今年も今日で終わり。

そう、今日は2001年の大晦日である。

いつも貧乏のどん底にある冴羽商事にも、否応なく正月はやってくるわけで……





「ちょっと…… 撩!!! あんた何回言ったら判るのよっ!」

「な・に・が〜〜?」

「何が、じゃない!あんたの当番になっている窓拭き!!

 それが終らないといつまでたっても新年を迎えられないのよ!判ってる?!」

「んなこと言ったってよお〜〜。もう外も真っ暗だし、今更磨いたって……」



バキッ! ドゴッ!



「別にあたしはいいんだけどねぇ〜。そばもおせちも永遠にお預けってことだねぇ。

 あ、その方が手間が省けるってもんだけど……」

「ゲ…ゲホッ……ひょ…ひょんなあ……かほりひゃ〜ん…」

「判ったらさっさとやんなさい!!」

「は…はいぃっ!」





そして撩は真っ暗で寒いベランダで只一人、窓磨きに精を出すことになった。



きゅっきゅっきゅっ……

きゅっきゅっきゅっ……



はぁ〜〜〜っ……

やってもやっても終らない気がする。





古くてもやたらと広い冴羽商事。たかが窓といったってかなりの数にのぼる。

それでも磨きつづけること数時間。ようやく最後の窓を拭き終えたときは、

紅白歌合戦も終盤に差しかかっていた。





「お疲れ様、撩」

「ああ……やっと終ったぜ。もうクタクタだ」



腕と肩をコリコリと動かしながら全身で疲れを表した撩に、香はくすっと笑って

見せた。



「年越しそば、できたよ。一緒にたべよ」

「待ってました♪」



そして紅白歌合戦の勝敗が決まり、蛍の光が流れる頃、大盛りのそばを

食べ終った撩はようやく満足感に浸っていた。





「どお? 一仕事終ったあとのおそばは美味しいでしょ?」

「一仕事ったってなぁ、お前……。いつだってオレは一生懸命働いているだろ?」

「あら、家事だって立派な仕事よ。少しはあたしのありがたみも判ったでしょ?」

「ふ〜ん……。これが立派な仕事だって言うなら、ちゃんと報酬貰えるんだろうな」

「え?」

「だから、報酬だってば。香ちゃん」



自分を射るように見る瞳の中に何やら怪しげな光を感じ取り、

香はじりっと数歩あとずさった。



「報酬なんか……払えないわよ。無事に正月迎えられる、ってだけでも恩の字だっていうのに」

「じゃあ、簡単な報酬でいいよ。いや、報酬というより、ご褒美、かな」

「ま、まさか! 体で払えとか言うんじゃないでしょうね」



大いに焦りながら慌てまくる香の様子に、撩は堪えきれなくなり、

くっくっと笑いを漏らした。



「いやあ…。新年早々そんな不埒なことしたら香ちゃん、口利いてくれなくなるでしょう」

「あ、当り前でしょ。ほんとにあんたったら何考えているんだか……」

「オレは煩悩だけで生きてるからな」

「じゃあ、除夜の鐘で煩悩退散してもらいなさい」

「うっ……」





ゴ〜〜〜ン……――



タイミングよくテレビから除夜の鐘が鳴り始めた。

耳を澄ますと、テレビの中からだけではなく、新宿の街からも微かに聞こえてくる。

おそらくどこか近くの寺から風に乗って流れてきているのだろう。





ゴ〜〜〜ン……――



ゴ〜〜〜ン……――





「なあ……」



大人しく鐘を聞いていた撩が、ふと顔をあげた。



「ひとつ提案があるんだけど」

「なによ」

「オレの煩悩退散に付き合ってくれない?」

「付き合う……って?」

「こうやって」





ゴ〜〜〜ン……――





そして香は鐘の音に合わせて

煩悩の数だけKISSをされたのだった。





<End>











  <あとがき>

    あけまして、おめでとうございます!

    しかし、煩悩って本当に108つもあるのでしょうかねぇ…。

    ど〜でもいいけど、カオリン唇腫れちゃうよぉ。



    ムツ 「カオリンの麗しい唇を返してっ!」

    撩  「ふ〜んだ!あれはオレのものだ」

    ムツ 「な、何だって〜〜〜っ (きーっ)」

    撩  「悔しかったら取ってみろ」

    ムツ 「くっそ〜〜っ!! いいもん!

        今年こそ絶対あんたをぎゃふんと言わせてみせるから!」

    撩  「ぎゃ、ぎゃふん、って…・それ死語だろ。歳バレるぞ」(にやり)

    ムツ 「うっ……(←墓穴堀った)」

    撩  「ってことで、読んでるみんな。今年もオレと香をよろしくな」

    ムツ 「ばかもん!それを言うなら読者さま、だろっ!言い直しなさいっ!」 

        ビシッ! バキッ!

    撩  「ええっと……いつもCH Pradise へ来てくださる読者のみなさま。

        今年も
(凶暴な)香とムツゴロウと、そして(かわいそうな)冴羽撩を可愛がってください。

        よろしく頼みます」 m(_ _)m

    ムツ 「よろしくね〜!」