あたしが淹れた紅茶を一口飲んだだけで、撩は不満を口にした。
あっ・・・ ごめん、またやっちゃった・・・ 「別に死にゃあしないし、いいけどよ。」 手にしていたカップを口元に運び、グビリと音を立てて飲んでいる。
別にケチっているわけじゃないんだけれどね。 ついつい、人数分だけしか葉っぱを入れないのよ。 プラス一杯っていうのが美味しさの秘訣だってことは知っているんだけど。
「ふ〜ん、そういうもの?」 そうよ。だけど、すぐ忘れちゃうの。 頭の中には、撩の分とあたしの分を淹れようってことしかなかったから・・・。 「じゃあ今度からは、槇村の分も淹れろよ。」
アニキの分? そうか。 そうだね。 それなら忘れることはない。
三人分の葉っぱで 二人分の紅茶を淹れる。 それが美味しさの秘訣になる。 そして最後に 『愛情』という名のエッセンスを垂らすの。
撩―― 次からは毎回、美味しい紅茶を淹れるからね。
<あとがき> なんともまあ、ベリーショートなお話でございます。
撩 「・・・・・・」 (←妙に照れている) ムツ 「この〜〜 幸せ者!」 撩 「・・・・・・」 (←幸せを噛み締めている) ムツ 「なんてカオリン、可愛いんだ〜!」 撩 「・・・・・・」 (←聞いちゃあいない) |