勝負の発端




 なんと言っても今年最後のチャンス。

 なけなしの300円をはたいて買った一枚の年末ジャンボ宝くじ。




 抽選日はいわずと知れた12/31。

 今年最後の運試し。




 当たれ〜〜!!




 執念にも似た念を込めて抽選を見守る。
 



 一等は………まぁね、当たるなんて思ってないし。

 そりゃあ、当たったら嬉しいけど。




 二等……これもね、難しいわよね。

 あ〜あ、当たらないかなぁ。




 だんだんと一枚のくじに込められた希望が萎んでいく。




 三等、四等。

 本当に当たっている人なんているのかしら?

 


 ついには疑いの眼差しで抽選会を見る。




 結局末等も当たらなかった……。




 がっくりとうなだれているところに、何やら特別の等が発表される。




 その数字。

 その数字を聞いて、見て疑った。

 だって、だって………






 当たってるんだもの〜〜!!!






 しかも賞金500万。

 依頼のない冴羽家では大金。

 どうしよう。

 とりあえずとりあえず、撩には内緒よね。

 どんな事になるか先が見えてるし。




 う〜んと、引き替えは来年だから手に入れられるのは先だけど。

 それまでに色々考えておかなくちゃ。





 
 と、まず。

 たまっているツケを払うのが先決よね。

 撩ったら何にも考えずに遊ぶんだもの。

 だったら男の依頼人でも受けて欲しいわよ。

 それを払ってもまだ残っているかな?

 多分まだ残るわよね。

 



 え〜っと………そうだ!



 そろそろ電化製品も傷んできてるのよね。

 大事に使っているつもりなんだけどがたが来ちゃってるし。

 ここはば〜んと最新型を買いたいわよね。

 最近の電化製品ってすっごく便利そうだし。

 冷蔵庫も今のより省エネで色んな機能も付いてるし、

 洗濯機も汚れが落ちやすいだろうし、掃除機も…。

 まとめて買えるだけのお金にはなるわよね。




 あと残ったら、服が欲しいなぁ。

 最近依頼がなかったから新しい服も買えてない。

 着古した服を大事に来てるだけだものね。

 せめて一着ぐらい新しいのが欲しいもの。

 あ、そう言えば撩の着たきりの服も何とかしないと。

 考えていると幾らでも出てくるわね。

 お金ってあればあるだけ使っちゃうモノなのかしら。
 
 


 あ〜、引き替え日が楽しみだわ。

 それまで大事に取って置かなくちゃ。

 とりあえずは裏にちゃんと署名とはんこを押さなくちゃね。
 



 テーブルに宝くじを置いて、ペンと印鑑を取りに立ち上がった。

 「何だ?宝くじ?」

 テーブルに置かれた宝くじを撩がぴらりと取り上げた。

 「……しまった。」

 「これ当たってるのか?」

 「え?う、ううん!!そ、そんなことない!」

 「そうなのか?で、何買うんだ?」

 「えっとツケ返すでしょ。それから電化製品を………あ!」

 慌てて口を押さえたが、後の祭り。

 「やっぱり当たってるんだな。」
 
 撩が悪魔のような笑みを浮かべている。

 「それはあたしが貴重な300円で買ったんだからね。」

 「元はと言えば俺が依頼を受けた金だろ?」

 「アンタがツケなんてつくらなきゃもっと楽に生活出来るのよ!」




 
 さて、この先一体どうなる?

 500万の大金の行く先は未だ不明…。

 このあと壮絶な闘いが始まるのでした。



 

<End>





【ムツゴロウの呟き】

ふさふささんらしいなあ。ツケの支払いと新品の電化製品(笑)

でもさ、カオリン。内緒で買っちゃったって、撩にはバレるじゃん。

一緒に住んでいるんだし。

しかし、この後の壮絶な闘いが気になる〜〜〜っ